「土地家屋調査士と司法書士の違いは?
「ダブルライセンスのメリットや試験難易度を知りたい」といった声に応えます。
土地家屋調査士と司法書士は、不動産の登記に関わる法律系国家資格という点で、多くの共通点があります。
どちらの資格も法務局に登記申請手続きを代理で対応できますが、具体的にはどのように異なるのでしょうか。
そこで今回は土地家屋調査士と司法書士の関連性や違い、ダブルライセンスのメリットなどをまとめてご紹介します。
土地家屋調査士と司法書士の説明もしているので、資格の勉強をしている・これからしようと思っている方にもおすすめの記事です。
土地家屋調査士と司法書士の共通点と違い
不動産の登記において担当する部分が土地家屋調査士と司法書士で違います。
土地家屋調査士と司法書士はどちらも不動産の登記をおこなうわけですが、そのうち、表題部は土地家屋調査士、権利部(甲区/乙区)は司法書士が担当しています。
独占業務となっているため、土地家屋調査士はこの業務を行うことができません。
表題部は「表示に関する登記」ともいい、土地の面積や建物の状況など、物理的な情報のことを指します。
土地家屋調査士も担当できる権利部は「権利に関する登記」ともいい、土地の所有者は誰なのか、いつ取得したのか、抵当権はあるのかなどの情報をいいます。
土地家屋調査士と司法書士の業務内容の違い
土地家屋調査士と司法書士の業務内容の違いを解説します。
両者の不動産登記に関する仕事や、その他の業務についても簡単に見ていきましょう。
| 項目 | 土地家屋調査士 | 司法書士 |
|---|---|---|
| 主な業務 |
|
|
| 登記での役割 | 建物の構造など目に見えるもの | 権利など目に見えないもの |
| 働き方 | 外での活動が比較的多い | デスクワークや顧客と直接向き合ってのヒアリングが多い |
| 平均年収 | 約765.3万円 ※令和6年度のデータ | 約765.3万円 ※令和6年度のデータ |
土地家屋調査士の業務内容
土地家屋調査士は不動産に関する登記に必要な調査及び測量、申請手続きなどを行うことを生業とする人のことを指します。
不動産登記の中でも土地家屋調査士の担当部分である表題部の業務は、下記の2ステップです。
- 土地面積の測量を行い、土地の境界を確定させる
- 登記証明書の表題部の変更や新規申請をする
まず土地の所有者の立ち合いのもと、専用の器具を使用して「土地の範囲を法的に確定」させます。
地面に赤い矢印のついた四角のものが埋まっているのを見たことのある方は多いはずですが、あれは全て土地家屋調査士が測量を行った印です。
引用:福岡県土地家屋調査士会
また測量が終わった後には登記の情報を更新するために、登記申請を代理するところまでが土地家屋調査士の仕事内容となっており、下記の記事でもご紹介しているように外での作業が多い士業として知られています。
他にも土地の境界をはっきりさせたい時の手続き代理や、土地のトラブル解決代理も土地家屋調査士の仕事となっています。
司法書士の業務内容
一方で権利部を担当している司法書士は、法務局や裁判所に提出する法的な書類作成のプロフェッショナルです。
具体的な仕事としては土地の売買や相続の手続き、会社設立に伴う手続きの代理業務などで、司法書士は不動産の登記事項照明書の「権利関係」に関わる手続きを担当しています。
不動産登記では下記のように目に見えない権利を取り扱っているのが特徴的です。
- 不動産売買で発生した所有権を移転
- それに伴って住宅ローンなどの抵当権を登記
他にも相続手続きや多重債務者の救済も司法書士の仕事の1つとなります。
司法書士は法的な資料作成が主な業務となっており、正確な知識に基づいた最適な業務が求められます。
土地家屋調査士と司法書士の資格取得難易度の違い
土地家屋調査士と司法書士のダブルライセンスには大きなメリットがありますが、取得難易度が高いというデメリットに気をつけましょう。
それでは実際に土地家屋調査士や司法書士の試験はどれほどの難易度なのでしょうか。それぞれの試験難易度や違いを分析していきます。
| 項目 | 土地家屋調査士 | 司法書士 |
|---|---|---|
| 試験難易度 | 高 | 激高 |
| 必要勉強時間 | 1,000時間 | 3,000時間 |
| 合格率 | 8%~9% | 3%~4% |
| 試験科目 | 3科目+測量や作図 | 11科目 |
土地家屋調査士試験の内容
土地家屋調査士の試験では記述試験と口述試験があり、神奈川県土地家屋調査士会が発表している試験の概要は下記の通りです。
- 民法に関する知識
- 登記の申請手続(登記申請書の作成に関するものを含む。)及び審査請求の手続に関する知識
- 土地及び家屋の調査及び測量に関する知識及び技能であって、次に掲げる事項
ア.平面測量(トランシット及び平板を用いる図根測量を含む。)
イ.作図(縮図及び伸図並びにこれに伴う地図の表現の変更に関する作業を含む。) - その他土地家屋調査士法第3条第1項第1号から第6号までに規定する義務を行うのに必要な知識及び能力
引用:神奈川県土地家屋調査士会
土地家屋調査士試験では登記についての法律や民法の他、作図や計算といった技術的な実力も試されます。
作図や測量は正確さとスピードが求められ、他にも民法が難しい、時間が少ないなどの要因から難しい試験とされています。
合格率は非常に低く、例年の合格率は8%~9%となっています。
合格に必要な学習時間の目安としてはおよそ1,000時間とされており、1年を学習期間とすると毎日2~3時間ほどになります。
司法書士試験の内容
司法書士試験は全て法律に関する出題となります。
- 【午前の部】
憲法,民法,商法,刑法 - 【午後の部】
民事訴訟法,民事保全法,民事執行法,司法書士法,供託法,不動産登記法,商業登記法
司法書士試験はカバーする必要のある法律が非常に多く、午前の部と午後の部、記述問題全てに基準点があるため難しい試験となっています。参考:法務省|司法書士試験
司法書士試験の例年の合格率は土地家屋調査士を大きく下回る3%~4%です。
資格界隈では「司法書士試験は司法試験の次に難しい」という声も多く、本気で合格を狙う際には3,000時間もの勉強時間が必要になります。
土地家屋調査士試験と司法書士試験ではどちらも民法と不動産登記法が出題され、調査士法と司法書士法も似たような内容となっています。
大きな違いはやはり土地家屋調査士試験では作図や計算が必要であること、司法書士試験では覚える法律の量が多いことです。
特に作図・計算は学習の仕方が全く違い、苦戦を強いられることもあります。自分の得意分野を考えながら、どちらの取得から始めるか考えるべきでしょう。
土地家屋調査士と司法書士の合格率を比較
土地家屋調査士試験の合格率は10%前後、司法書士試験は3〜4%と、どちらも難関資格ながら大きな開きがあります。
しかし受験者数を見てみると、土地家屋調査士試験は毎年4,000人程度が受験するのに対し、司法書士試験は1万人以上が受験します。
どちらも合格者数はほぼ一定で400人と600人で大差ないため、受験者数の多い司法書士試験の方が合格率が低いのは当然と言えます。
どちらの試験も非常に難易度が高いことは確かですが、上位400人、あるいは600人に入る実力をつけさえすれば、誰でも合格を目指すことのできる試験です。
| 土地家屋調査士 | 司法書士 | |||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 受験者数 | 合格者数 | 合格率 | 試験年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
| 4,589人 | 505人 | 11.0% | 令和6年 | 13,960人 | 737人 | 5.3% |
| 4,429人 | 428人 | 9.6% | 令和5年 | 13,372人 | 695人 | 5.2% |
| 4,404人 | 424人 | 9.6% | 令和4年 | 12,727人 | 660人 | 5.2% |
| 3,859人 | 404人 | 10.5% | 令和3年 | 11,925人 | 613人 | 5.14% |
| 3,785人 | 392人 | 10.4% | 令和2年 | 11,494人 | 613人 | 5.14% |
| 4,198人 | 406人 | 9.7% | 令和元年 | 13,683人 | 601人 | 4.39% |
| 4,380人 | 418人 | 9.5% | 平成30年 | 14,387人 | 621人 | 4.32% |
| 4,600人 | 400人 | 8.7% | 平成29年 | 1,5440人 | 629人 | 4.07% |
参考:法務省|土地家屋調査士試験、法務省|土地家屋調査士試験
土地家屋調査士と司法書士の平均年収の違い
土地家屋調査士と司法書士の平均年収はそこまで大きな違いはありません。
ここでは、土地家屋調査士と司法書士の平均年収の違いについて紹介します。
土地家屋調査士の平均年収は約765.3万円
土地家屋調査士の初任給は330万円程度からはじまり、平均年収は約765.3万円というデータがあります。
さらに能力を身に着けていくほど年収は上がっていき、所属する事務所や会社にもよるもののおおよそ600万円ほどまであがるのが一般的です。
また土地家屋調査士は独立をして成功することで1,000万円以上を目指すことも可能ですが、平均年収は働く地域によって異なります。
司法書士の平均年収も約765.3万円
司法書士の初任給は約350万円で、平均年収は約765.3万円とされています。
キャリアを重ねるにつれて年収は増加し、勤務司法書士としては600万円から700万円程度に達することが一般的です。
需要がある程度安定しているため独立して成功を収めれば、年収1,000万円以上を目指すことも十分可能です。
土地家屋調査士と司法書士の年収には大きな違いは見られませんが、ピーク時の年収においては司法書士の方が高収入を得やすい傾向があります。
土地家屋調査士・司法書士に向いている人
ここでは、土地家屋調査士・司法書士に向いている人の特徴についてそれぞれ紹介します。
土地家屋調査士に向いている人
- 緻密な作業が得意な人
- 正確性と注意深さを兼ね備えた人
- 新しい知識や技術を学ぶことに興味を持つ人
- 体力があり、屋外での作業に抵抗がない人
土地家屋調査士は不動産の登記手続きを正確な測量と図面作成を通じて遂行する仕事です。
具体的には不動産登記法に従い、細部にわたる注意を払いながら図面や申請書を作成したりなどします。
したがって土地家屋調査士には緻密な作業が必要であり、正確性と注意深さを兼ね備えた人が適しています。
また近年、技術の進歩により、ドローンやGPSを活用した測量システムが開発され、実際に利用されています。
将来的には今よりももっと新しい測量技術が登場する可能性が高いことから、新しい知識や技術を学ぶことに興味を持つ人は、土地家屋調査士に適しているでしょう。
さらに土地家屋調査士は室内作業だけでなく、フィールドワークの割合も高いため、体力があり、屋外での作業に抵抗がない人にも向いていると言えます。
司法書士に向いている人
- 細部にわたる作業が得意な人
- 数字や細かい部分の確認に苦手意識を持たない人
- 誠実で責任感のある人
- 柔軟なコミュニケーション能力がある人
司法書士は土地家屋調査士と同様に、細部にわたる作業が求められる職業であり、数字や細かい部分の確認に苦手意識を持たない人が適しています。
また、依頼者の法的な問題においては、財産や債権などの個人情報を扱うため、大きな責任が伴います。
作成した書類の提出期限を厳守することは、司法書士の基本的な義務です。依頼者の信頼を守りつつ法的手続きを進めるためには、常に誠実で責任感のある態度が求められます。
さらに司法書士は一般的に堅い印象を持たれがちですが、実際の業務では柔軟なコミュニケーションが不可欠です。
同僚との密接なコミュニケーションは業務の効率を高め、依頼者や関係機関の担当者とのやりとりも頻繁に行われます。
高いコミュニケーション能力を持つ人は、円滑な協力関係を築くことができ、複雑な法的課題の解決がしやすいでしょう。
土地家屋調査士と司法書士のダブルライセンスのメリット
土地家屋調査士と司法書士のダブルライセンスのメリットを解説します。
ダブルライセンスには、実務面と勉強面の両方でメリットが存在します。
メリット1】不動産登記をワンストップで行える
これが最大のメリットとも言えますが、ダブルライセンスとして活動することで登記業務を0から100まで自分でこなすことが可能です。
もし片方の資格しか持っていなければ表題部か権利部のどちらかは外注しなければなりませんし、自身に入ってくる利益もかなり削れてしまいます。
依頼する側としても、同じ人に全て任せられた方がコストも手間も抑えられ、依頼がしやすくなります。
土地家屋調査士と司法書士のダブルライセンスを実現することができれば、キャリア面と収入面の両方で大きな成長を見込めるでしょう。
司法書士×土地家屋調査士って鉄板のダブルライセンスだと思う。今月だけで5件程度、調査士さんへの手続き依頼をしている。これを自社で行うことができれば、事務所の売上が大幅に上がったはず。
意外とこの二つのライセンス保持者は少なく業界では重宝される。今後、ますます希少になりそうな予感。— しゅうじ@司法書士×都内不動産投資 (@1LDK_RC) October 14, 2020
メリット2】独立開業の際に有利
これは土地家屋調査士と司法書士のどちらでも重要なポイントですが、何かの分野に特化したブランディングを行わないと集客が難しいのが現実です。
独立開業を検討しているならなおさら、登記をワンストップで行える土地家屋調査士事務所あるいは司法書士事務所は大きな強みになります。
個人事務所で大切なのは、「いかにして顧客を集めるか」です。他の人との差別化を図っていくなら、土地家屋調査士と司法書士のダブルライセンスは非常におすすめと言えるでしょう。
メリット3】試験に共通点があり勉強しやすい
土地家屋調査士と司法書士はどちらも国家試験に合格しなければなれません。
試験の内容や難易度については後ほど解説しますが、両者の試験にも共通点があるため、資格取得という観点から見てもダブルライセンスにはメリットがあります。
特に土地家屋調査士で鬼門とも言われる民法が共通していることや、不動産登記法についても同様の範囲となります。
どちらも難しい試験ではありますが、すでに学習した内容を生かすことができるのは大きなメリットと言えますね。
土地家屋調査士や司法書士の資格取得はアガルートがおすすめ
最近では国家資格でも難関に部類される土地家屋調査士や司法書士に特化した資格予備校や通信講座がかなりの数乱立しています。
中でも最もおすすめするのは、アガルートアカデミーという通信講座。
最後に、アガルートアカデミーの『土地家屋調査士試験講座』と『司法書士試験講座』をまとめてご紹介します。
アガルートアカデミーとは
アガルートアカデミーとは、2013年に設立された新進気鋭の通信講座です。大きな特徴は高い合格率と手厚いサポート、初学者でも合格できるカリキュラムです。
そしてオンライン通信講座であるため時間と場所に縛られず、いつでも学習できるというメリットがあります。
さらにおまけポイントとして、たとえばアガルートの司法書士試験講座を受講して試験に合格し、その後土地家屋調査士試験講座を受講する際には講座料金が20%OFFになるというお得な面もあります。
アガルート 土地家屋調査士試験講座の概要
アガルートの『土地家屋調査士試験講座』では、全国1位で試験に合格した実績を持つ中山祐介講師の指導が受けられます。
合格するために必要最低限のエッセンスを詰め込んでいるため講義時間はコンパクトにまとまっており、充実したアウトプットで本番力を磨けるカリキュラムが特徴です。
また講師自らが設計した講義とフルカラーテキストの完成度も高く、知識を習得しやすいでしょう。
アガルート 司法書士試験講座の概要
土地家屋調査士よりも合格するのが難しい司法書士ですが、アガルートの『司法書士試験講座』では最短ルートで合格するための最高峰の講義を受けることが可能です。
講師の方は司法書士を始めとした資格の有資格者である上、これまで様々な事務所・団体で実務を行ってきた素晴らしい実力者が勢ぞろいしています。
講義内では初学者にも配慮し難解な法律用語もわかりやすく説明してもらえるため、今まで法律に触れてこなかった方も約250時間の講義の中でプロフェッショナルに成長できるでしょう。
どちらも定期カウンセリングや徹底的なフォローがある
ここで紹介する土地家屋調査士試験講座と司法書士試験講座は、どちらも定期カウンセリングやフォローを受けることができます。
定期カウンセリングは月に1回30分、講師からカウンセリングを受けられるというもので、学習の進捗確認や疑問点など、なんでも相談できます。
通信講座でありながら直接サポートを受けることができるため非常に使い勝手が良く、多くの受講生が定期カウンセリングを利用しています。
アガルートの手厚いサポートがある試験対策講座で、土地家屋調査士試験、司法書士試験の短期合格を目指しましょう。
土地家屋調査士と司法書士の違いに関するよくある質問
土地家屋調査士と司法書士のどちらが難しいですか?
司法書士は法律科目の学習範囲が広く、合格に必要な勉強時間も3000時間以上と長い傾向があり、合格率も4~5%程度で低いです。
土地家屋調査士は合格率8~10%程度で、勉強時間は1000時間以上が目安です。
土地家屋調査士と司法書士のダブルライセンスを取った場合の年収は?
独立開業すれば1000万円以上も十分に可能で、両方の資格で不動産登記に関わることで、より多くの案件を獲得できて、専門性を高められるでしょう。
土地家屋調査士にしかできないことは何ですか?
不動産の表示に関する登記は、不動産登記法によって義務付けられており、その申請手続きは土地家屋調査士のみに限定されています。
土地家屋調査士と司法書士の資格取得はどっちがいい?
不動産登記に興味があるなら土地家屋調査士試験から受験し、共通部分を学びつつ司法書士試験にもチャレンジする方法もおすすめです。
土地家屋調査士と司法書士の業務には違いがある
今回は難関国家資格である土地家屋調査士と司法書士の違いやダブルライセンスについて、メリットや難易度を紹介しました。
業務的な共通性が多いことから他の組み合わせと比較しても利点が大きく、不動産登記のプロフェッショナルとして大きくキャリアアップすることが可能です。
ただダブルライセンスは難易度も高いため、アガルートの『土地家屋調査士試験講座』と『司法書士試験講座』をおすすめします。
最短最速で合格して早く活躍するためにも、まずはアガルートの公式ページをチェックしてみてはいかがでしょうか!
