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司法試験の難易度は高い?他資格との難しさの比較や合格のポイント・独学合格は可能かについても解説【日本一難しいって本当?】

この記事の監修者
ゆら総合法律事務所・代表弁護士 阿部 由羅
弁護士 阿部 由羅 さん

ゆら総合法律事務所
・代表弁護士。2013年司法試験予備試験合格、2014年司法試験合格。
西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。
特にベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。
東京大学法学部卒業、東京大学法科大学院修了。

将来の法曹三者(裁判官・検察官・弁護士)を目指す方は司法試験への合格が必須となります。

司法試験は国家試験の中でも合格率40%程度と試験の難易度の高さ、学習量の多さおよび合格率の低さなどからかなりハードルが高いといわれています。しかし、決して合格できないわけではありません。

そこで今回は、司法試験の難易度について詳しく解説します。

司法試験の合格率は40%~45%と難易度が高い

こちらでは司法試験の過去22年分の合格率のデータをまとめました。

司法試験の合格率は年々上がっているといわれていますが、どのように推移しているのか確認していきます。

【過去22年分】司法試験の合格率の推移
西暦 受験者数 合格者数 合格率
2002年 41,459人 1,183人 2.85%
2003年 45,372人 1,170人 2.58%
2004年 43,367人 1,483人 3.42%
2005年 39,428人 1,464人 3.71%
2006年 32,339人 1,558人 4.82%
2007年 27,913人 2,099人 7.52%
2008年 24,464人 2,209人 9.03%
2009年 22,613人 2,135人 9.44%
2010年 21,386人 2,133人 9.97%
2011年※ 8,765人 2,063人 23.61%
2012年 8,387人 2,102人 25.06%
2013年 7,653人 2,049人 26.77%
2014年 8,015人 1,810人 22.58%
2015年 8,016人 1,850人 23.08%
2016年 6,899人 1,583人 22.95%
2017年 5,967人 1,543人 25.86%
2018年 5,238人 1,525人 29.11%
2019年 4,466人 1,502人 33.63%
2020年 3,703人 1,450人 39.16%
2021年 3,424人 1,421人 41.50%
2022年 3,082人 1,403人 45.52%
2023年 3,928人 1,781人 45.34%
2024年 3,779人 1,592人 42.1%

参照:法務省:司法試験の結果について

上記の表では過去22年分の司法試験の合格率をまとめました。

こちらの表を見てわかるように司法試験の合格率は年々上昇しており、2021年度以降は合格率が毎年40%を超えています。

司法試験は相対評価の試験ですので、受験者数の減少により合格率が相対的に上がっている面があります。

また、2023年の合格者数は前年比で400人近く増えたこともあり、合格率が高くなっています。

受験者数は年々減少傾向のため、今後も合格率は上昇していくと考えられます。

司法試験の合格を目指されている方は今がチャンスであるといえるかもしれません。

予備試験の合格率は4.0%前後

次に司法予備試験の合格率をご紹介します。

司法試験の合格率は年々上昇傾向にありましたが、受験資格となる予備試験の合格率も上昇しているのでしょうか?

予備試験の合格率について以下にまとめましたので是非参考にしてください。

予備試験 合格率の推移
西暦 受験者数 合格者数 合格率
2015年 10,334人 394人 3.8%
2016年 10,442人 405人 3.9%
2017年 10,743人 444人 4.1%
2018年 11,136人 433人 3.9%
2019年 11,780人 476人 4.0%
2020年 10,608人 442人 4.2%
2021年 11,171人 467人 4.0%
2022年 13,004人 472人 3.6%
2023年 13,372人 479人 3.5%
2024年 15,764人 461人 3.6%

参照:法務省:司法試験予備試験の結果について

予備試験の合格率は4.0%前後で推移していました。

司法試験と違って受験者数は減少しておらず、毎年11,000人前後の多く方が受験されています。

しかし、2022年以降受験者数が増加しており、合格者数は例年とほぼ変わりないため合格率が4%を少し下回る結果です。

また、予備試験の合格者の司法試験の合格率は法科大学院の卒業生より高いというデータが出ています。

令和6年度司法試験の合格者の割合
受験者数 合格者数 合格率
予備試験合格者 475人 441人 約92%
法科大学院卒業生 2,072人 471人 約23%
法科大学院在学中 1,232人 680人 約55%
合計 3,779人 1,592人 約42%

参照:法務省「令和6年司法試験法科大学院等別合格者数等

上記の表の通り、予備試験合格者の司法試験合格率は約92%と非常に高くなっています。

合格率4.0%前後の予備試験を合格した方は、その後本試験までしっかり勉強すれば、司法試験でも十分に合格できるレベルであるといえます。

予備試験合格者の受験者数は法科大学院の卒業生の数と比べると少ないですが、その圧倒的な合格率で司法試験全体の合格率を底上げしていることがわかります。

2025年(令和7年度)の司法試験の内容

2025年(令和7年度)の試験日程

司法試験、予備試験の日程は以下のとおりです。

7月16日(水) 論文式試験 選択科目(3時間)
公法系科目第1問(2時間)
公法系科目第2問(2時間)
7月17日(木) 印字系科目第1問(2時間)
民事系科目第1問(2時間)
民事系科目第1問(2時間)
7月19日(土) 刑事系科目第1問(2時間)
刑事系科目第1問(2時間)
7月20日(日) 短答式試験 憲法(50分)
民法(75分)
刑法(50分)

参照:令和7年司法試験の実施日程等について

司法試験では予備試験と異なり口述試験はなく、論文式試験と短答式試験のみになります。

論文式試験3日間、短答式試験1日間のスケジュールです。

司法試験の受験資格

司法試験予備試験とは?【仕組みをわかりやすく解説】

司法試験の受験資格は、下記2つの方法で取得するのが一般的です。

  • 司法試験予備試験に合格すること
  • 法科大学院の課程を修了すること

司法試験予備試験は毎年5月、7月、10月に実施され、3回に分かれて行われます。

すべての予備試験に合格すればのちに紹介する法科大学院生よりも早く司法試験に挑戦することができるので早く受験資格を得たい人におすすめです。

ただし、現実的に司法試験予備試験に合格することは簡単ではなく、多くの方は法科大学院の修了を目指すことになります。

司法試験の合格難易度が高い理由

一見、合格者数の増加や合格率が上昇していることから簡単になったと思われがちですが、司法試験は依然として超難関な国家試験となっています。

ここからは、司法試験の難易度が高い理由をご紹介します。

理由1】受験資格と受験制限が設けられた

昔の司法試験には受験資格が無く、誰でも受験が可能でした。しかし、現在の司法試験制度には明確に受験資格が設けられています。

司法試験の受験資格は以下の通りです。

司法試験の受験資格
  • ①法科大学院を修了した者(翌年3月までに修了見込みの者も、学長の認定を受ければ受験可能)
  • ②予備試験に合格した者

ただし受験資格を得たとしても、以下の制限がある点にも注意が必要です。

司法試験の受験制限
  • 受験資格を得てから5年間の受験が可能(司法試験法4条1項)
  • 5年間を経過すると受験資格は失効する
  • 再度①②のいずれかを満たせば再受験が可能

現行の新司法試験制度では法科大学院(2年間または3年間)に通って修了するか、予備試験に合格しなければ受験資格を得られない制度になっています。

さらに受験資格取得後から5年間しか受験できませんので、期間が過ぎればまた予備試験に合格するか法科大学院に通わなければなりません。

このように一定以上の法律の勉強をしてきたと認められなければ受験ができなくなったことから以前よりも受験するハードルが高くなったといえます。

理由2】予備試験の合格が4.0%前後

前述した通り、司法試験を受験するには「①法科大学院を修了する」「②予備試験を合格する」かの二択となりますが、多くの方は予備試験合格ルートで受験資格を得ています。

しかし、この予備試験の合格率は4.0%前後と非常に難関な試験となっているため、受験資格を得るだけでも大変なのです。

理由3】相対評価制度で競争率が高い

司法試験は相対評価制度を用いている試験ですので、決まった合格点以上を取ればいいのではなく、受験者全体の上位の得点を取らなければ合格できない試験となっています。

つまり合格率4.0%前後の予備試験を突破した受験者と、法科大学院で2年間または3年間みっちり勉強してきた受験者たちと上位争いをしなければならないということです。

近年の司法試験の合格率は40%前後で、大変な勉強を経て受験資格を得た人でも、約6割は不合格となってしまいます。

旧司法試験制度時の合格率2.38%~9.97%と比べても、今の司法試験が「簡単になった」とは言い難いのではないかと筆者は考えます。

理由4】1科目でも最低ラインを下回れば不合格

司法試験は「短答式試験」「論文式試験」の2種類の試験の総合得点で合否が判定されます。

司法試験には合格できる最低ラインの点数が各科目に定められており、1科目でも最低ラインを下回れば不合格になってしまいます

司法試験の最低ラインは以下の通りです。

短答式試験の最低ライン
  • 憲法:満点50点→最低ライン20点
  • 民法:満点75点→最低ライン30点
  • 刑法:満点50点→最低ライン20点
論文式試験の最低ライン
  • 民事系:満点300点→最低ライン75点
  • 公法系:満点200点→最低ライン50点
  • 刑事系:満点200点→最低ライン50点
  • 選択科目:満点100点→最低ライン25点

理由5】論文式試験の配点が8割もある

総合得点は「短答式試験と論文式試験の比重が1:8」で計算されます。総合得点の計算式は以下の通りです。

総合得点の計算式
総合得点の算式=短答式試験の得点(満点175点)+(論文式試験の得点(満点800点)×1400/800)=1575点満点

近年の司法試験の総合得点の合格基準点810点前後で推移しています。

論文式試験の配点が8割以上と非常に大きいため、平均合格基準点の810点以上を取る場合は短答で100点、論文で405点以上の点数で合格できる計算になります。

平均点を取るための得点基準
短答式試験の得点(100点)+(論文式試験の得点(405点)×1400/800)=810点

ただし、短答式試験の合計得点が足切りラインを下回っていると、論文式試験の採点が行われず不合格となってしまいます。

令和5年度の司法試験では、短答式試験の合計得点が99点以上必要とされています。

理由6】一般的に3,000時間〜10,000時間もの勉強が必要

司法試験に合格するためには「法科大学院を修了する」もしくは「予備試験に合格する」のどちらかルートを経て、受験資格を獲得する必要があります。

どちらのルートから司法試験を受験するかによって勉強時間は異なりますが、長期間の勉強時間の確保は必須です。

法科大学院には2年間または3年間通う必要がありますが、予備試験に挑む人は、それと同程度の学習を行わなければなりません。

司法に関する知識がある人とない人で差はありますが、3,000〜10,000時間程度の時間は必要です。

司法試験の難易度を他の資格と比較

司法試験と行政書士試験の難易度を比較

令和5年の司法試験と行政書士試験の合格率を比較します。

ます。行政書士は、契約書や行政機関に提出する申請書などを作成する国家資格です。

司法試験の合格率が約45%なのに対し、行政書士試験の合格率は14%となっています。

試験 受験人数 合格人数 合格率
司法試験 3,928人 1,781人 約45%
行政書士試験 46,991人 6,571人 約14%

※出典:法務省「令和5年司法試験の結果について,総合評価
※出典:一般社団法人行政書士試験研究センター「令和5年度行政書士試験実施結果の概要
行政書士試験は受験資格が定められておらず、誰でも受験できます。

間口が広く受験人数も多いことから、落ちてしまう人数も多いのでしょう。合格率のパーセンテージだけで比較すると、司法試験の方が行政書士試験よりも簡単に見えます。

しかし、司法試験の受験資格である「予備試験」の合格率が一桁台であることを考慮すれば、行政書士よりも難しいと言えるでしょう。

司法試験と司法書士試験の難易度を比較

次に、司法書士試験と難易度を比較します。司法書士は、主に登記や供託に関する業務を取り扱う国家資格です。

令和6年度の司法書士試験合格率は約5%であるため、司法試験合格率の8分の1となりました。

試験 受験人数 合格人数 合格率
司法試験 3,779人 1,592人 約42%
司法書士試験 13,960人 737人 約5%

※出典:法務省「令和6年司法試験の採点結果
※出典:法務省「令和6年司法書士試験の最終結果について

司法書士試験の受験人数は、行政書士と比べて少なくなっています。司法書士試験は学習量が多く、合格率も低いため、受験へのハードルは高い状況です。

司法書士試験には受験資格や年齢制限が無いものの、受験生の平均年齢は41歳となっています。

司法書士試験は学歴を問わず受験可能ですが、内容が難しいため、社会人経験を得てから司法書士試験を受験する人が多いのでしょう。

司法試験と司法書士試験の比較では、学習すべき量は司法試験が司法書士試験を大きく上回ります。

また、司法試験は受験資格を得るまでが大変です。予備試験の合格率は4%前後で、司法書士試験の合格率(約5%)と同程度かそれを下回っています。

上記の理由から、司法試験は司法書士試験を上回り、法律資格試験の最難関として知られています。

難易度の高い司法試験に合格するポイント

ポイント1】短答式は過去問で7割取れるようにする

短答式試験は6割程度の得点で足切りを回避できますが、学習目標としては7割以上の得点を目標にするとよいでしょう。

過去問を繰り返し解き、分からなかったところは基本書や教科書で復習して、7割以上の得点を得られるように練習しましょう。

短答式試験の内容
配点 試験時間
憲法 50点 50分
民法 75点 75分
刑法 50点 50分

短答式試験は、以下のように点数と試験時間が連動しているのが特徴です。

上記の時間内で過去問を解き、ペース配分を掴むことが大切です。

ポイント2】論文式は添削してもらいながら勉強する

論文式は、短答式と違い文章で答える試験となります。

このため論文式の対策としては、誰かに添削してもらいながら勉強するのが望ましいです。

論文式はどの科目も得点配分がかなり大きいので、しっかりとした対策が必要になるでしょう。

論文式試験の内容
配点 試験時間
憲法 100点 120分
民法 100点 120分
刑法 100点 120分
商法 100点 120分
行政法 100点 120分
民事訴訟法 100点 120分
刑事訴訟法 100点 120分
選択科目 100点 180分

独学で勉強される方もいますが、論文の場合は通信講座などでプロに見てもらう方が効率よく勉強できます。

最短ルートで合格を希望される場合は、論文式だけでも予備校・通信講座を活用することをおすすめします。

ポイント3】選択科目は興味のあるものを選ぶ

選択科目は、他の論文式の科目と同様に100点満点ですが、試験時間が1番長く設定されています。

以下の科目から好きなものを選べるので、興味のあるもの・将来に役立ちそうな科目・人気の科目などから選んでください。

論文式の選択科目
  • 倒産法
  • 租税法
  • 経済法
  • 知的財産法
  • 労働法
  • 環境法
  • 国際関係法(公法系)
  • 国際関係法(私法系)

「最短で合格に近づきたい」という人は得意な科目、将来やりたいことが具体的に決まっている人は、進みたい分野に合った科目を選択するのがおすすめです。どれにすればいいか分からない方は、人気の選択科目を選ぶと良いでしょう。

例年では、労働法・倒産法・知的財産法の選択者が多く、対策テキストなどもたくさん出版されています。分かりやすく解説されている本や動画が多いほど、試験対策がしやすいでしょう。

ポイント4】インプットだけではなく過去問対策も徹底する

司法試験の合格を目指すのであればインプットだけではなく過去問対策も徹底して行いましょう。

知識をたくさんインプットしたとしても、実際に過去問を解かなければ、試験の問題に対応することは難しいです。

これまでの司法試験の過去問に取り組み、インプットした内容が定着しているかを定期的に確かめていきましょう。

ポイント5】予備校に通う

司法試験に合格したいのであれば自己学習も大切ですが、予備校に通って効率的に学ぶことも大切です。

これまでの司法試験の傾向から、出題科目に絞って対策してくれたり、個人個人にあわせた対策を取ってくれることもあります。

もちろんお金もかかりますが、本気で司法試験の合格を目指しているのであれば、予備校に通うことも検討しましょう。

ポイント6】通信講座を利用する

通学する必要がある予備校ではなく、自宅で学習を進めたい人は通信講座もおすすめです。

通信講座の特徴として、いつでも好きな時間に学習を進められる点が挙げられます。

また、スマホやPCからも学習が進められるため、移動時間や休憩時間などスキマ時間でも学習が進められるのもメリットでしょう。

独学よりも費用は必要になりますが、自身で学習を進めるのに不安がある人やテキストだけでなく、スマホでも学習をしたい人にもおすすめの勉強方法といえます。

司法試験を独学で合格するのはどれくらい難しい?

そもそも教材や過去問の意味を理解することが難しい

司法試験に合格するために、独学で学習を進める人もいます。

試験勉強ではインプットとアウトプットの繰り返しが重要になるため、自身で学習を進める際もテキストなどを使用して対策をする必要があります。

しかし、司法に関する知識がない人がテキストの内容を理解することは容易ではありません。

テキストに記載されている内容が何を意味するのか、このテキストにおける用語の意味はどう解釈すれば良いのかなども、独学で理解するのは至難の業です。

学習能力が相当高い方など以外は、独学ではそもそも合格のためのスタートラインに立つのも難しいというのが正直なところです。

専門家や講師のアドバイスを受けることが前提となる

試験に出やすい問題の対策や論文対策も、専門家などのアドバイスを受けずに行うのは困難といえます。

独学学習に向いている人は、司法に関する知識があるもしくは司法関連の仕事に携わっている人でしょう。

初めて試験を受験する人や知識のない状態での独学学習は、モチベーションを保つことも難しいためおすすめできません。

司法試験の難易度は依然高い!通信講座・予備校の利用がおすすめ

今の司法試験は簡単になったといわれますが、実際のところは簡単にはなっていませんでした。

しかし、司法試験の合格率は受験者数の減少により年々上昇しています。

司法試験は相対評価の試験ですのでライバルが少ない今がチャンスです。

また、司法試験・予備試験の対策法を検討されている方には通信講座の利用がおすすめです。